先日mildom(ミルダム)「格ゲー勢」を賑わせた「投げ銭文化問題」だが、これを勘違いしている、というのは少し言い過ぎだが、とらえ方を間違えている人があまりにも多い気がするので、その事をここに書いておこうと思う。
まずミルダムというのは中国のdouyuと三井物産が展開している配信サイトだという事は多くの方がご存じの通り。
ミルダムにおけるギフト(投げ銭)というのは配信中に配信者に対して身銭を切ってそれを送れるシステムだ。そしてこの取り分はミルダム7割:配信者3割らしい。
このシステムは中国で展開されている「本家」のdouyu(闘魚とかいてドウユウと読む)でもほぼ同じなのだ。気になる人は実際に見に行ってみよう。(ちなみに筆者は2018年3月からのウォッチャーでもあった。)
ここからが本題だが、なぜこの「中国由来の投げ銭」が日本のミルダムで根付かないかだ。
スト5コミュニティの中心の近くに居る、某aさんが日本にはチップの文化が無いから~とかvtuberの配信では投げ銭が飛び交っているのに~とか、格ゲー界は元々嫌儲で~などと言っていたがこれらはその理由にはならない、なぜなら「中国の投げ銭」は「中国の経済事情」と「中国人の特性」がマッチしたことによって成立しているからだ。
具体的に行こう。いわゆる基本無料、アイテム課金(ガチャ課金)のゲームはそのゲームの売り上げの大半を全アカウントの1%未満の人が支払っているという話は聞いたことがおありだろうか。配信サイトの投げ銭もそれに近いものがあると思われる。
無料で配信を視聴できるのだから、わざわざお金を払おうと思う人などほぼいなくなるのは当たり前である。(それはつまりみんなで少額でもいいからチップ感覚で投げ銭しよう!が、収益に繋がりにくい事を意味する)
そこで「中国の経済事情」である。中国経済は(も)いわゆる「貧富の格差」が激しく、富める者は当然富むが、電機工場が集まる中国南部の深センの工場で働く人たちは月3000元~の条件で働いている人たち(打工ダゴン、いわゆるバイト)もいるわけだ。(1元は日本円で15~16円、この条件だと月給45000円から50000円だ。この手の情報は求人看板などをyoutubeに現地の人たちがたくさん上げている。)
では誰がdouyuなどの配信サイトで投げ銭ができるのか。当然「お金がある人」という程度の答えしか言えず、残念ながら筆者はその具体的なデータなどは持ち合わせていないが、配信を見る余暇と金銭的余裕を両立していられる人が富裕層の中にいるということなのだろう。
もう一つの根拠として「中国人の特性」を挙げることができる。これは差別でも偏見でもなく当の中国人達が認めるところなので言っても構わないと思う。その「中国人の特性」というのは非常に「メンツを気にする」というものだ。
見栄を張りたがると言い変えることもできる。一例としてdouyuで投げ銭が行われると老板!(ロウバン、社長の意、よっ、社長!という感じだろうか)などと配信者とコメント欄が一緒になって持て囃しつつ盛り上がるのだ。
翻って日本においてはどうだろうか、日本人は全体的に見ればそういう面は少ないのではないだろうか。中には見栄を張りたがるという人もいるだろうがそれはどこの国でも同じだ。
具体例を挙げよう。nさんという一部のミルダム格ゲー界隈では有名な視聴者がいる。この方はものすごい量の投げ銭をすることで有名に(ネタにされたりした)なった視聴者なのだが、この方が先述のaさんの配信の中でなぜミルダム格ゲー(スト5)界隈で投げ銭が少ないのか問題を視聴者も交えて議論していた。
その中で投げ銭しづらい空気(雰囲気)があるとコメントなさった。どういうことかというとnさんは投げ銭したい気持ちがあっても、投げ銭する事によって配信者が反応した結果自分だけが「浮いたような」感じになる。それを考えてしまうので投げ銭する前に堂々巡りになってしまうという趣旨だ。
中国人が「メンツを気にする」なら、日本人は「空気を気にする」というわけだ。
以上がミルダムの投げ銭が根付かない理由だが、この他にもミルダムというサイトそのものにも問題があると思われるがそれはまたの機会に。